過剰相対リスク (Excess Relative Risk) について

放影研のLSSコホート論文を読もうと思い、いろいろ下調べ。 最初は、「過剰相対リスク (ERR: Excess Relative Risk)」 について。ググってみると、長崎大の「放射線生命科学国際コンソーシアム」の用語解説のページが見つかる。
一般的な疫学研究において2つ以上の集団でリスクを比べる時、非曝露群と比べて曝露群が「何倍」のリスクがあるのかをみるのが相対リスク (RR: Relative Risk)。例えば、被爆線量がゼロの集団における疾患Aの発生リスクが10万人あたり2人で、被爆線量が1 Svの集団では10万人あたり5人だった場合、単純なRRは、5 ÷ 2 = 2.5 倍 となる。しかし、放射線被ばくのリスク評価では、放射線を浴びることによって単位線量当たりどのくらい過剰にリスクが上昇したのかをみる過剰相対リスク (ERR: Excess Relative Risk / 1Sv) という指標が用いられることが多い。上記の例では、単純なERRは、 (5 - 2) ÷ 2 = 1.5 となり、被爆線量1Sv 浴びると1.5倍過剰に発生リスクが上昇することを意味する。
ほう。けど、なんでRRじゃダメなのか。もうちょっとググると、
Suissa S. Relative excess risk: an alternative measure of comparative risk. American journal of epidemiology. 1999;150(3):279-82. (PubMed, PDF)
この論文が出てきて、雑誌名から察するに疫学分野の有名な雑誌で、タイトルから察するにERRという指標を最初に提唱した論文かな。1999年ってわりと最近。で、中を見てみると、 
2種類の薬と高齢者ドライバーの自動車事故のリスクを考える。もともと、1000人の高齢者が1年間に起こす事故が10件だとする。もし、薬Aを飲むと8件余計に事故が起こり、薬Bを飲むと4件余計に事故が起こるとする。1年1000人あたり起こる事故の件数は、薬Aを飲む群で10 + 8 = 18件、 薬Bを飲む群では10 + 4 = 14件。なので、比較相対リスク (Comparative Relative Risk) は、 18 ÷ 14 = 1.3。一方で、 過剰相対リスク (Relative Excess Risk) は、(18 - 10) ÷ (14 -10)  = 2。
RRだとバックグラウンドのリスクに隠れてしまうので、暴露要因部分のリスクを比較する場合にはERRを使うのが適切だろう、という論文。そりゃそうですね。

たとえば、もともと10万人中1000人がかかる病気があって、条件Aではこれが1200件、条件Bでは1020件になるとしたら、比較相対リスクは1200 ÷ 1020 = 1.18 で、過剰比較リスクは(1200 - 1000) ÷ (1020 -1000)  = 10ですもんね。

で、ちょっと用語がすでに混乱してるけど、説明の中身からすると、比較相対リスク (Comparative Relative Risk) = 相対リスク (Relative Risk) ですよね。あと、"Relative Excess Risk" と "Excess Relative Risk" は一緒で、過剰比較リスク(Comparative Excess Risk) はERRとそれぞれ同じもの?違うもの?日本語でも余剰と過剰が混在してるけど、一緒ですよね。違うのかな。整理すると、

疾病あり疾病なし
暴露XA人B人
暴露YC人D人
非暴露E人F人


として、
  • Xの危険度 R(X) = A / (A + B)
  • Yの危険度 R(Y) = C / (C + D)
  • バックグラウンド危険度 R(Bg) = E / (E + F)
とすると、
  • 相対危険度(Relative Risk) = R(X) / R(Y)
  • 寄与危険度(Attributable Risk)= R(X) - R(Y)
  • 過剰相対リスク (Excess Relative Risk) = {R(X) - R(Bg)} / {R(Y) - R(Bg)}
ですよね。

で、放射線影響協会というところの用語解説に、
死亡率(あるいは死亡数)や発生率(あるいは発生数)の観察値をO、期待値をEとすると、相対リスク(RR)、過剰相対リスク(ERR)はそれぞれ以下の式で示される。
RR = O/E,  ERR = RR-1 =(O-E)/E
ってあるけど、ERR = RR-1 になるかな…。式から判断して上の表で言い換えると、O = R(X), E = R(Y) ですよね。(O-E)ってつまりは寄与危険度ですね。それを R(X) で割ってERR...。ここでいうERRって、バックグラウンド危険度とか関係なくて(というか暴露Yがバックグラウンドで)、Suissa の「Relative excess risk」とは関係なくて、名前をつけるとすると、余剰寄与危険率比、ってことですね、うん。きっとそうだ。

単純に、危険度の上乗せ部分がもとの危険度の何倍か、の指標ですね。ERRが「2」というのは、暴露のせいで、もとのリスクの2倍が上乗せされて、「3」になってる、ってことですね。うん。そうだ。もともと10%の人がかかる病気があって、何かの暴露のERRが0.5の場合、0.1 + (0.1 * 0.5) = 0.15 、つまり15%になる、ってことですね。

ま、ERRは分かった(と思う)。なんだけど、広島や長崎のデータから、これ実際どうやって算出するのかな。またおいおい。

つづく。



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